1123856998*公職選挙法

よく抜け道だらけの法律をザル法と呼びますが、公選法に勝手に名前を付けるとしたら投網法じゃないかと思います。
ザルなら同じ方法を使えばすり抜けられます。
でも投網の場合は、ターゲットの位置にいると、ひっかかります。


どこからが選挙違反か
選挙違反と聞いて一般的にまず思い浮ぶのは、買収、饗応ですね。
投票行動や票のとりまとめの見返りに金品や飲食を提供してはならない、というものです。
民主主義政治を守る上で、当然すぎるルールです。
でも、ある衆議院候補を経験した友人が、その選挙区で支援者の会合を開いてみたら、「で?いくらくれるんだ?」と口々に詰め寄られ、半分ノイローゼになっていました。あれから数年、あの地域の政治風土が変わっているといいんだけど。


で、どこからが違反かという話ですが、「刺されたら違反になる」が実態に近い表現ではないかと思います。
過去何10箇所もの選挙の手伝いに行った経験から書くと、実際の運動(告示・公示前と告示・公示後の選挙運動期間をあわせて)では、一般有権者が気づかないような選挙違反行為に触れないよう、各陣営は神経をすり減らしているのが実態だと思います。
たとえば、

  • 運動期間前のたすきの着用は売名行為(事前運動にあたる)のため出来ない。
  • 顔写真入りのぼり旗は本人を類推させるためNG。
  • 街頭演説などで告示・公示前に「立候補します」など出馬表明と取られる言動をしてはならない。
  • 本番中の街宣車の車体に選挙用ポスターを貼ってはいけない(文書違反)。
  • 事務所のお茶菓子はおせんべいはセーフでショートケーキはアウト(判例あり)。
  • 選挙事務所で支援者にタダで食事の提供はできない。

他にも色々とありますが、こんなルール、一般有権者のどれだけが知っているでしょうか。
そして実態は、「たすきは名札である」「のぼりの顔写真は模様である」「立候補ではなく○○選挙の準備中です、と言うならよし」「お茶菓子の種類まで気にしてられません(差し入れも来るし」「届け出た運動員の食事提供+アルファで見逃して」という具合に、かなりおおらかに違反している例も数多く存在するようです。(あえて「ようです」としておきます)
ポスターベタベタの街宣車がフツーの選挙区もあれば、全車スッキリと車体ポスターなしの選挙区もありました。それこそ「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の世界。
それらが違反として検挙されるか違反にならずに済むかどうかは、その地域の選管と警察がどこまで本腰入れて追いかけるか次第。地域によって千差万別。まさにローカルルール天国と言えましょう。


通報合戦
一般有権者には分かりづらい公選法違反行為を、一般の人が通報するということはまずありえません。通報の多くは、対立陣営および支援者の中でも公選法に詳しい人によるものが占めていると思います。
通報を受けた警察は、違反行為の疑われる陣営に対し、注意や警告を発します。そのために対応する人員を取られ、警告など行われれば陣営の支援者間の士気にも影響が及びます。
それだけでも相当なダメージです。検挙にまで至らずとも、ジャブ攻撃が出来れば相手の体力を奪うことが出来ますから、通報側としては目的達成とも言えるでしょう。


事前運動の禁止について
公職選挙法では、事前運動を禁止しています。
選挙運動期間よりも前に
「一票入れて下さい」「立候補します」「選挙を手伝って下さい」
などなどと言ったり書いて配ったりしてはいけない、というきまりです。


なのに、現在世の中では、立候補を予定している方々が堂々と
「勝たせて下さい」「公認で戦います」「○区に××党公認で出馬します」
などと思い切り出馬表明、投票のお願いをしています。
それらはメディアの映像や音声としてしっかり残されてもいます。

  事前運動の禁止(荒川区のサイト)

  • 公職選挙法では、選挙運動は、選挙の公(告)示日から投票日前日までの間しかできないことに決められています。すなわち、公(告)示日前の選挙運動、いわゆる「事前運動」は一切禁止されています。
  • 事前運動が禁止されているのは、各候補者の選挙運動を同時に開始し、無用の競争を避け、また、選挙運動費用の増加を抑制し、お金のかからない選挙を実現しようとするものです。
  • ある行為が、選挙運動にあたるかどうかの判断は、その行為のなされる時期、場所、方法について、総合的に実態を把握してなくてはなりませんが、公(告)示日前から、立候補を予定している人の名前を連呼したり、投票依頼をおこなったりすることは事前運動として禁止されています。

今回の衆議院議員選挙は、8月30日が公示ですから、公然と出馬表明をしてもよいのは8月30日のはずです。

テレビで、街頭で、全国各地の会合で、元衆議院議員や新人予定候補達がしておられることを、もしも警察が真剣に取り締まったら、ほぼ全員逮捕になってしまうのではないでしょーか??

そんなことを考えてしまいました。

ちなみに私は過去4回の選挙において、告示日まで一切「立候補します」「私に票を入れて下さい」というセリフは我慢しましたよ。壁に耳あり障子に目ありで、いつ何時刺されるか分からない、いえ、公選法がある以上、法令遵守は国民の義務ですから。


公選法はこのままでいいのか
違反の線引きが、都道府県によって違い、恣意的運用がまかり通る状態のままでは、一般の市民が政治家を目指す意欲をそぎ、政治にかかわるとややこしい、ろくなことがないと政治への無関心を引き起こす原因になっています。
もっと単純明快に理解しやすく、有名無実化した規定があるなら廃止し、グレーゾーンのない姿へと改正していくことも、政治家の務めであると思いますが、いかがでしょうか?